破産の場合の対処

倒産するということ

倒産と一口にいっても様々な場合が考えられますが、簡単にいうと、借入額が財産を上回り、支払ができなくなった状態を指します。この場合、裁判所の関与のもとに倒産の処理を行うことを「法的整理」、裁判所等を介せずに処理を行うことを「任意整理」といいます。このうち「法的整理」には、①破産②民事再生③会社更生④特別清算があり、「任意整理」には第三者を介して話し合いをするもの(ADR等)と、直接債務者と交渉するものがあります。

倒産状態になった債務者から債権を回収することは非常に難しくなります。たとえ回収できたとしても、ただでさえ借入額が財産を上回っているので、債権額に比べて、回収額は非常に低くなってしまいます。

倒産状態からの債権回収

法的整理の場合

法的整理では、各債権者を平等に扱うために、手続が厳しく定められています。債権者といえどもこの手続に従って権利を行使することが求められ、抜け駆けは許されません。
このような場合、債権者としては少ない配当で満足するしか無いのでしょうか。いいえ、債権の性質をよく理解していれば、債権を回収することは可能なのです。以下では代表的な倒産手続として、破産の場合を例にご説明します。

まず、ある種の債権は、破産手続でも優遇されています(「財団債権」といいます。)ので、破産に関係なく回収することが可能です。例えば従業員の賃金は、月給の3ヶ月相当分が優遇されており、倒産したとしても満額で回収することが可能です。
また、普通の債権であっても、担保が付いている場合には手続に縛られることはありません(別除権)。随時担保を実行して、担保から優先的に債権を回収することが出来ます。売掛金等の場合、引渡した商品に先取特権という担保権が法律上発生しますので.引渡した商品を再度違う人に売って、代金を回収する事が出来ます。
さらに、破産した債務者に対して債権ではなく債務もある場合、相殺によって債権と債務を同じ額だけ消滅させ、実質的に債権を回収することも出来ます。

任意整理の場合

任意整理の場合、債務者が債権者と個別に話し合いを持つことによって、債務の内容を組み直していきます。あくまで個別の話し合いにより解決していく手続ですので、債権者が話合いに応じない場合には任意整理は成功しません。しかし、任意整理が不調に終わった場合、法的整理に移ることが多いですが、法的整理では殆どの場合、少額の配当しか受け取ることが出来ないのが現状です。

そこで任意整理では、法的整理になる可能性と、その時の回収額を考慮に入れながら、任意整理でより多く回収できるよう交渉する必要があります。また、任意整理段階で債務者に担保を求め、法的整理になった場合に備えることも有効な手段です。

倒産状態からの債権回収も弁護士におまかせ

債務者が倒産状態になった場合、法的整理であれば、手続に従った権利行使が必要となりますし、任意整理の場合には、債務者との交渉が必要となります。これらの手続はご本人様が行うことももちろん可能ですが、短い時間で処理が進む倒産手続を理解し、適切な対応をすることは大きな負担が伴うことも事実です。また、債務者との交渉においても、「どのように交渉すべきか」「どこまで譲歩すべきか」を踏まえて交渉することが求められますが、ご本人様の場合、感情が先に出てしまい、建設的な話し合いにならないこともあります。

このようなことから、債務者が倒産状態になった時も、弁護士に回収を依頼したほうが、結果としてより良い回収額を得ることが出来ることとなります。