時効について

時効とは

債権という権利は永遠のものではありません。一定の期間何もせずに放置された場合には、時効によって権利行使ができなくなります。日本の民法で「時効」と言われるものには、「取得時効」と「消滅時効」という2つの制度があるのですが、ここでは、権利が消滅する、という「消滅時効」が問題となります。

時効制度の理由は以下の3つであると説明されます。

  1. 権利を行使しない状態が長く続いた場合、この状態を尊重する必要がある
  2. 時間が経つと、権利を証明することが難しくなる
  3. いつまでも権利を行使しない人は、保護する必要はない

消滅時効は、端的に言うと債権者としての保護を受けられなくなる制度です。債権が時効によって消滅してしまうと、原則として債権を回収することはできなくなってしまいます

時効期間について

時効期間が経過して権利が消滅してしまうことを、「時効にかかる」と言いますが、ではどのくらいの期間で債権は時効にかかってしまうのでしょう。

原則として、債権の時効期間は10年と定められています(民法167条1項)。つまり、10年使わなければ、債権は消滅してしまうのです。しかし、この原則には、多くの例外があり、10年より短い時効期間が定められています。

5年で消滅時効にかかるもの

  • 商事債権(会社の取引などで生じた債権です)
  • 家賃

3年で消滅時効にかかるもの

  • 医師・助産師・薬剤師の医療・助産・調剤に関する債権
  • 請負債権

2年で消滅時効にかかるもの

  • 売掛代金債権
  • 学芸・技能の教育者の教育・衣食・寄宿に関する債権
  • 労働者の賃金

1年で消滅時効にかかるもの

  • アルバイトの給与
  • ホテルや旅館の宿泊料、キャバレーや料理店などの飲食料
  • 運送費

このように、時効期間は実は非常に短く設定されています。いつまでも請求できるもの、と考えることは非常に危険です。早めに対策を行うことで確実な債権回収につなげるべきでしょう。

 時効への対抗手段-時効の中断-

では時効に対抗し、自己の権利を消滅させないためにはどのようにしたらいいのでしょうか。
答えは簡単です。時効制度の理由の一つが「いつまでも権利を行使しない人は、保護する必要はない」ということですので、権利を行使すればよいのです。具体的に何をすればよいかは、法律に書いてあります。つまり

  1. 債務者に請求する
  2. 債務者に対して差押え・仮差押え・仮処分を行う
  3. 債務者が債務を承認する

のいずれかを行えば、時効を中断することが出来ます。

しかし、1は単純に、債務者に対して「支払ってくれ」といえば良いものではありません。ここでいう「請求」とは、裁判や支払督促を申し立て、相手方に返還を求めることを指します。単に「支払ってくれ」というのは法律上の「催告」に当たり、その後6ヶ月以内に裁判などの法的措置をとらないと、時効を中断させることはできません。

なお、1~3の手段をとった場合であっても、完全に時効によって債権が消滅しなくなるわけではありません。時効の中断によって、時効期間は0に戻りますが、中断をした時から再度時効期間は進みます。中断をした時から更に時効期間を経過した場合には、時効にかかってしまいますので、注意が必要です。

時効期間が経過しても大丈夫?

時効の効果は、単純に期間の経過により発生するものではありません。時効の効果は、債務者が「時効の利益を受けます」という意思表示をすること(=これを「時効の援用」といいます。)によって初めて発生します。
つまり、期間が経過したあとであっても、債務者が「時効の援用」をしない限りは、権利を行使することが出来るのです。
さらに、時効期間が経過したあとに、債務者が債権の存在を「承認」した場合、つまり「支払う義務がありますよ。」と認めた場合には、債務者は以降「時効の援用」ができなくなってしまいます。

このように、時効期間を経過した場合であっても、やり方によっては債権回収を図れる場合もあります。

時効の中断や、時効期間経過後の請求は弁護士に!

時効期間を中断するためには、相手方に正確な意図を伝える督促を行わなければなりません。また、のちのち争われた場合のために、証拠を残す意味でも内容証明郵便を使うことが有効だといえます。
また、時効期間後の請求も、同じく紛争を防ぐため、しっかりとした文面で債務者から承諾をもらい、証拠を残すことが必要になります。

当事務所では、時効の中断や時効期間経過後の債権回収についても、しっかりとサポートさせていただきます。