債権を回収するまで

ご依頼者様との面談と、方針の決定

まず、債権回収をご依頼頂くご依頼者様と面談をし、現在の状況を確認します。債権回収には、

  1. 債権の種類や内容(売掛金か貸金か、期限はいつまでか、利息は何%か等)
  2. 今までの経過と支払われない原因
  3. 債務者の対応と債務者の財産の有無

など、具体的な情報が不可欠です。このような情報をご依頼者様に確認していただくことによって、問題点を明らかにしていきます。そして、債権回収を達成するためにはどのような手段をとることが適切かをアドバイスしていきます。

また、長期間行使されず、時効によって権利行使ができなくなるおそれのある債権については、速やかに時効中断措置をとります。

債務者との交渉

ご依頼者様との面談で、まず任意交渉をすべきである、と判断した場合には、債務者にコンタクトを取り、支払をするよう促します。支払を促すことによって債務者が支払えば、コストも非常に安く済みますし、解決までの時間も短くて済むからです。

書面の送付

任意交渉のスタートは、債務者に支払の案内を送付するところから始まります。債務者に支払が遅れていることを気づかせ、支払をするよう促します。債務者は少し前までご依頼者様のお客ですので、むやみに法的な文書を送付し、相手の感情に訴えることは得策とは言えません。
そこでまずは、債務者に支払を促すような文書を送付し、引き続く直接交渉につなげていきます。

電話による交渉

書面を送付することによって債務者が支払に応じれば問題はありませんが、支払がなされない場合には、引き続いて債務者に電話をかけ、支払いをするよう交渉を行います。

債務者が支払をしない場合には、何らかの事情(手許に資金がない、優先すべき支払先がある等)があります。債務者と直接交渉し、どのような事情で支払がなされていないのかを確認した上で、支払をすることが債務者にとっても有益であることを伝えて支払を促します。
そして、今すぐに支払えない場合には、支払を承認することを書面として残し、後の債権回収を容易にします。

対面による交渉

電話に出ない、もしくは不在が多い債務者に対しては、直接債務者の住所に出向き、または当事務所に来所頂くようにし、直接交渉を行います。電話では互いに膝を突き合わせないため、どうしても感情に訴える物言いになってしまいがちです。直接対面して話し合うことで、支払をするためにはどのようにすればいいかを訴え、債務者が支払をするように促します。

債務者との合意が整った場合

債務者と支払をすることで合意に至った場合、この合意を書面にして証拠として残す必要があります。この場合、債務者が債務の存在を認めて、支払について合意していますので、後々紛争になることを防止するために、以下の手続をとって、書面を「債務名義」とすることが有益です。債務名義を持っていることで、裁判によって判決を取得しなくても、強制執行が可能となるからです。

公正証書による方法

公正証書は公証人によって作成される書面で、書面は公証役場に保管されます。この公正証書にした書面に、更に「執行認諾約款」が付されている場合、この公正証書で強制執行をすることができます。

即決和解による方法

即決和解とは、示談や和解契約の締結後に、裁判所の仲介により裁判上の和解として和解調書を作成する手続です。作成された和解調書は同じく債務名義となりますので、のちのち裁判手続を経なくても強制執行が可能となります。

無論、債務名義をとることだけが解決ではありません。債務者が支払を約束したならば、相応の担保をとることによっても、債権回収を確実なものにすることが可能です。
担保として一番ポピュラーなものは、不動産に対する抵当権設定ですが、連帯保証人を求めたり、債務者が有する売掛金を譲渡担保にすることも担保設定の手法の一つです。

債務者との合意が整わない場合~内容証明郵便による督促~

債務者が任意の話し合いで支払に応じない場合、内容証明郵便を使った督促が考えられます。内容証明郵便は、その名の通り郵便局が郵便物の内容を証明してくれる制度です。また同時に配達証明をつけることによって、相手方に届いていることも証明することができます。

内容証明郵便には、法的強制力はありません。内容証明郵便によって債務者にこちら側に意思が伝わったことは証拠として残りますが、この証拠によって即、強制執行が出来るというものではありません。むしろ内容証明郵便には、「内容証明郵便が届いた」事によって、債務者にプレッシャーをかけることに主な目的があると言えるでしょう。専門家の作成した内容証明郵便ならば、債務者に対するプレッシャーもより大きいものが期待できます。あくまで内容証明郵便は、債務者の任意の支払を促しつつ、次の段階へ進む布石と言えるでしょう。

しかし、逆に言うと、内容証明郵便は宣戦布告と受け取られてしまう可能性も少なくありません。内容証明郵便を「法的な手段をとること」と同じように考え、かえって債務者の態度を硬化させてしまうことも考えられます。

支払督促による督促

支払督促は、裁判所書記官が発令する手続で、債務者に支払いを求めるものです。いわば裁判所が出す催告書といえるかもしれません。債務者は支払督促に対して異議を申し立てることができますが、異議がでない場合には、支払督促に「仮執行宣言」をつけることができ、この「仮執行宣言」をつけた支払督促は、債務名義として強制執行が可能となります。

また、支払督促は裁判所から届きますので、債務者に対して支払へのプレッシャーをかけることができます。
ただし、債務者が支払督促に異議を出した場合、通常訴訟に移行することになります。

民事調停を申し立てる

合意が整わない場合であっても、話し合いの余地がある場合には、民事調停を利用することも一つの方法です。民事調停では、裁判所で裁判官・調停委員・当事者が話し合い、当事者間に合意を作っていきます。当事者間で合意に至った場合には、調停調書が作成されます。そして調停調書は債務名義となります。
無論、債務者が話し合いに応じなかったり、応じたとしても譲歩の余地がない場合には、民事調停を利用するメリットは殆どありません。

少額訴訟の提起

少額訴訟とは、通常の訴訟より簡易で、安価に利用できる訴訟手続です。期日も原則として一期日で終了するため、迅速な手続と言えるでしょう。無論、判決は債務名義となります。
一定の制約はありますが、少額訴訟の要件を満たす場合には、少額訴訟を提起することにもメリットがあると言えるでしょう。

ただし、債務者が少額訴訟による審理ではなく、通常訴訟の審理を求める場合には、提起した少額訴訟は通常訴訟に移行することになります。この場合、上で述べた少額訴訟の簡易・迅速さは失われてしまうことになります。

通常訴訟の提起

上記の手続が利用できず、また、相手方が全面的に争っている場合には、通常訴訟を提起することになります。訴訟手続の中で、両当事者の主張を述べ、主張を裏付ける証拠を提出することによって、主張された権利があるかどうかを判断していきます。

弁護士は簡易裁判所の訴訟手続について、ご依頼者様の代理人として手続を進めて参りますし、地方裁判所や高等裁判所の訴訟手続では、訴状・答弁書・準備書面等、裁判所に提出する書類の作成を通じて、裁判手続をサポートしていきます。
訴訟手続を進め、判決を取得した場合、判決は債務名義となります。

強制執行手続

以上の手続で債務名義を取得した場合で、その後も債務者からの支払がない場合には、最終的には強制執行手続によって債権回収を図る必要があります。
債務者が持っている財産(動産・不動産・債権など)を差し押え、これを金銭に換えることによって、債権を回収します。また、債務者が給与所得者である場合には、給与の一部分(原則として給与額の4分の1)を差し押さえることもできます。

繰り返しになりますが、債務者に財産がない場合には、差押えを行っても回収をすることはできません。この場合、債権回収は回収不能で終了することとなります。